春の終わりと夏の始まりの日に

先日、いくつか展覧会を拝見したので、そのレビューを備忘録的に。


◆第67回春の院展 @京都高島屋(5/30-6/11)
日本画」なるものと出会って以来ずっと「日本画との向きあい方」についてあくせく悩んできた。
でもまあ仕事やプライベートでしょっちゅう日本画の展示を観に行くようになって、やっと、

「どのくらいその絵に包み込まれた空気や匂い、厚みを想像することができるか」

ということと

「どれくらい自分の記憶を再生するスイッチとして有効に機能するか」

ということの2点に絞ってザーッと観ていけばいいかなーと思うに至り、少し気分が軽くなる。

で、こんな量的な価値判断に委ねてもええか〜的な雑な結論をサックリ出してしまうのもつまらないので、
こんな凝り固まった認識がぐるんと転換するような作品との出会いを求めて今後とも熱心に見つめていきたい。
(※ア!もちろん、オオーとなる作品はいくつもあったわけです。個人的には野地美樹子先生と小田野尚之先生がすてきでした。)


◆「第七感」展 @GALLERYはねうさぎ
お世話になっている立見祐一さんがご出展なさっていたので。
立見さんともたまたまお会いでき、しばらくおはなし。
立見さんの、あの、ネガティブさをじっくり煮つめてぎゅっと木綿で濾した煮汁みたいな、
濃いけど爽やかみたいなスタンス、見習わなきゃなーと改めて思う。


◆小沢さかえ&安藤隆一郎展 @MORI YU GALLERY

小沢さかえ「きのうみた夢を喰う Essen, was ich gestern getraeumt habe」 2009 oil on canvas 116.7x80.3cm


安藤隆一郎「水平飛行の飛び方 」 5.2011 W 50.0 - H 50.0 chemical dye on cotton cloth by batik

画風も手法も全然違うお二方の作品展でしたが、いい具合に立体感のある世界観を演出されていました。

それで、考えたのは「作品の中に主人公がいるかどうか」という話。

小沢さんの作品にはどうやら、必ず登場人物というか、主人公がいる。
それは絵の中の女の子であったり、画面上には現れないけれどじっと小沢さんの世界を見つめる視線の持主としての女の子、みたいな存在であったり。
(もちろん、主人公は女の子に限らずどうぶつであることもしばしばなわけだけれど。)

けど、安藤さんの作品にはいなかった。
登場人物の存在は徹底的に抹消されていて、
人間のいた形跡とか、「こんな巨大な宇宙ステーション?みたいなモノ動かすには必ず操縦する人がいるだろう」とかをがんばって想像してみるけれど、
でもやっぱりどれだけ覗いても主人公の気配はない。

主人公の存在と不在。
このちがいが観る人にどんな影響を与えるのか、なんてこと、もう少し考えてみたいと思う。


◆京展(-6/14)
その他にも、アートオークションやらイベントやら展覧会でお世話になった方がいっぱい。
みんな京都(関西)でがんばってはる。

服部しほりさんもドギャンと戦ってた。ドギャンと。バギョンと。かっこいっす。
この画面から迸るマスキュリニズム的な何か、これが今後どうなっていくかが楽しみなところ。
実家に飾ってある服部さんの作品、また観に帰りたいなー。


◆[まとめ]高島屋京都店6階リビングフロアで出会ったサンドピクチャー(10000円)の前で

今日は仕事が早く終わったぞ。久しぶりに街中でも散歩しようかな。
そう思った時に「アートを観に(買いに)ギャラリー・美術館に行く」
という選択肢がスムーズに出る人っていうのはなかなかいないんじゃないかなと思う。
だって大抵の美術館は17時に閉まるし、ほとんどのギャラリーが19時に閉まるわけだから。

仮に閉店時間に間に合ったとして、おそるおそる入ってみても、作品だけがキメ顔で置かれていて、
もちろんプライスリストがある、なんてこと分からない。”お店の人”はパソコンの画面とにらめっこ。
んー、現代アートわかんない。

それでそそくさと店を後にして、オフィースカジュアルを買いに高島屋へ。
6階インテリアアートコーナーにあったサンドピクチャーの無為性、自然性、飽きのこない絵柄に癒され、1万円で購入。

見つめていると、どこか遠くの世界をうつしているような、
それでいてむかし夢でみた風景にも似ているような。
私に語りかけているようで、優しい無関心で包み込んでくれているような。
なんだか不思議な気分になれる。
デスクの上に置いて、気分転換にクルリと回す。これで満足。

なんてことは充分にありえる話だと思う。それがいいか悪いかはもちろん別として。

芸術のシーンが長らく見過ごしてきた多くの機会損失を、丁寧に、少しずつ埋めていくこと。
それが作家でもギャラリストでもない私たちの仕事なのかなと思いました。

そんな感じです。オチなくてすいません。精進します。

それでは、また。(太田けいこ)